考え事の日。

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特急列車の中で女性が暴行を受けていたのに、車内にいた40人の方が何もしなかったというニュースが取りざたされていて、色んなところでこの40人の方が悪い人みたいに言われていたり、「自分なら絶対に助けた」なんてコメントを沢山見ますが…iuにはちょっと疑問が。

事件の記事:
http://www.j-cast.com/2007/04/23007096.html
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070422i312.htm

このケースって、40人が卑劣だったからとかではなくて、社会心理学で昔から言われている「傍観者効果」の典型例のような…

このことを考慮するとこの40人の方が特別に卑劣で、わざと知らんぷりしていたとは言えないのではないかと思うのです。

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実は前述の傍観者効果というのは昔(確か60年代)アメリカで今回の事件とよく似たケースの事件をきっかけとして考察されたモノ。

このアメリカの事件でも街中で女性が暴行されて、しかも何人もの目撃者が実際に助けを求めるこえをはっきりと耳にしていたにもかかわらず、救助をせず、結果、女性が暴行・殺害されたというものだったと記憶しています。

この事件でも新聞では悲鳴などを耳にしたのに何もしなかった40人くらいのヒトのモラルを非難したり、社会のモラル低下を論じる風潮が強かったとか弱かったとか。

ただ、これが本当に目撃者のモラルの問題だったのか疑問を持った科学者がいて色々考察&実験して出てきたのが「傍観者効果」という概念だったのでした。

確かこの概念を構成するのは3つくらいの要素なのですが、iuが覚えているのは「責任の分散」と「多元的無知」。

「責任の分散」はその名の通り沢山人がいる結果、責任が分散されること。結果、「誰かがやるだろう/やっただろう」と思って何もしない人が増えます。

「多元的無知」は「(状況がよくわからないときは)他の人のマネをする」という人間の習性がもたらす罠のこと。周りの人が何もしないと、人間は何もしないのが正しいことだという風に誤認してしまうのです。逆にみんなが略奪をしているなら、自分も略奪をするのが正しいように思えたり、平常時に比べて略奪に対する抵抗感が薄れたりします。

で、iuの忘れたもう1つか2つの要素を別にしても、上記2つの要素で上手く連鎖が起きそうなのはおわかりになるかと。

(責任が分散されるので、みんな何もしない−>みんなが何もしないので、何もしないのが正しそうに見える。−>何もしないことが正しそうなので、「助ける」責任が余計に希薄になる−>みんな何もしない−>…)

特に多元的無知の方ですが…人間は状況が曖昧であればあるほど、他所の行動を模倣しようとする傾向が高まるので「怪しげな風体の男性が泣いている女性を従えている」という情報だけで2人が赤の他人であって、女性は脅されていて、今後暴行を受けるトコロである、ということを推測することはできないですし…

このことを考えたときに今回の40人の方の行動はまったく褒められませんが、現状のように暴行犯の共犯のように責められることはないとiuは思うのです。

また、冷静な状態&全ての情報が開示された状態で「自分なら助けた」と後で言うのはどうかなとか。(勿論、自分ならどうしたか、今後、同様の状況でドウするかを考えることは大変有用と思いますし、そうすべきだと思いますけれど。)

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ところで、iuはすごく昔に、ただの興味から赤十字の救急救命の講座を受けてみたことがありました。

このときにも確か「救助に当たってていても、周りに人垣ができるだけで、そのままでは周りの人は助けてはくれない」という話を聞き、そこで「救助に当たるときには周りの傍観者の1人をさして“そこの赤いシャツの方、手伝ってください”と、いう風に具体的に人物を特定して協力を要請すること」という説明を受けたのです。

そのときには、心理学的な背景は説明がなかったのですが(iuも中学校を出て少しくらいだったかと思うので、説明していただいても理解できなかったかもですけどね(笑))間違いなく、上記の研究を背景にした指導であったと思います。

実際、人間が傍観者効果を味方につける方法は、赤十字の指導員さんの説明の通りです。

まず特定の個人を名指しすることで「責任の分散」を回避、でもって、複数人にそれぞれオーダーを与え、救助活動を活発化させることで、「救助活動に参加することが正当な行為である」という風潮を創出。こうすると、集団を味方につけることができるわけです。

(因みに、後日、iuが実際に今回の事件がおきたのと同じサンダーバードの車内で救助を行う場面がおきたのですが、その場で傍観者効果が実際に起きることと、この対処法の効果を実感しました。)

今回の事件でも、女性が具体的に誰かに助けを求めると40人のほとんどが連鎖的に救助に当たってくれたのではないかと信じるのですが…

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特に最近は街中で喧嘩するカップルなど、変な人が多いので内輪もめなのかそうでないのか判断する基準もないし、紛らわしい事件が多いので、特に何かあったときには積極的に声を出すべきと思います。

難しいかもしれませんが、自衛のための上策はそれだと思います。

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とか何とか考えてみた日。

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